この物語は
悪魔のようなお笑い教師に
小学6年の子供達が闘いを挑んだ
一年間の記録
青木「夏休みの間、毎日出席する度にそのカードに
この「あたしンちシール」を貼ります。
テストの成績が良かったり、ネタが面白かったりする人にシールを張りますから、
全員、首からぶら下げて常に携帯するように。
そうして各自のポイントを集計したものを、グラフにして張り出します。
もちろん、一番得点の低い人には、居残りで罰を与えます。
そうね、みんなが帰るまで、
机の上に「ワッショイ」のポーズで反省するのはどう?
今まで以上に雑用も増やしてね」
「あの先生!得点が高い人には何かいいが事があるんですか!?」
青木「もちろんよ。
夏休みの間にカードのポイントが満点になった人には、
その場で卒業証書とサザエさんカードを渡します。
その人は、二学期から学校に来る必要はありません。
彼はこんな物を貰うために学校に来ている訳じゃない…などと
愚かなことを言っていたけど、他の人は頭がいいからわかるわよね?
卒業証書をもらえれば、もうネタを考えたり、
罰を受けることも無くなるのよ?
それに、朝寝坊しようが遅刻をしようが、
朝の特売に並ぼうが、もう文句を言われないのよ。
それにいいともをリアルタイムで毎日見れるわよ」
「私は…やっぱりおかしいと思います。夏休みなんだし、思い出作りたいとか思わない?」
「いいですね〜!海とか、山〜!」
「やっぱり夏休みですしね〜!」
青木「いいのよ。来たくない人は来なくても。
でもいいのかしら?自分達が遊んでいる間、クラスのみんなに
どんどん取り残されても。
いくら成績トップのあなた達と言えども、
今のお笑い界ほど下克上の流行ってる世界は無いのよ」
「あとから頑張りましょうよ!」
「ねぇ!ファイトォファイトー!」
「私、行きます!」
「僕も行きます!」
「私も!」
「僕も!」
「俺もです!」
(みんな…)
「夏休みがないっていうのは、どういうことなんでしょうか?」
「うちは塾があるんですが…」
「うちは実家に行くことになっていて」
「給食は?」
「お金はー?」
「私たちも小さい頃、楽しみでしたよね!夏休みってね!」
青木「私が分かっていただきたいのは、皆さんのお子さんは今、
確実に成長しているということなんです。
それなのに夏休みをダラダラ過ごしていいんでしょうか?
せっかくの成長が止まり、全て水の泡になってしまうんですよ。
…お手元のスケジュール表を見ていただければわかると思いますが、
無料の塾代わりと考えていただければ、皆様にとっても
決して悪くないお話だと思うんですが。
私立を受験するお子さんは、この夏休みが勝負です。
私立を受験する予定のないお子さんは、同級生と多くの時間を過ごした方が、
より有意義な毎日を送れます。
なぜなら、子供は、
子供同士の間で成長するからです」
「ああー!」
「なるほどぉー…」
「うちもお願いします!」
「私、やっぱり行く!」
「なんでだよ!」
「なんかピンチはチャンスって感じがするんだよね」
「?」
「このチャンスを利用して、逆にみんなと仲良くなれるような気がして」
「大丈夫かよ…またみんなにイジメられるかもよ?」
「大丈夫だよ。だって…私はもう一人じゃないからさ」
「え?」
「バカでお調子者でどうしようもないけどね」
「それどういう意味だよ!」
「…!!真矢だ」
「!!………え!……いないじゃん…?」
「バッカが見るー!!!」
(…)
「もしもし、やっくん!ごめんね、昨日。
ちょっと保護者とトラブっちゃってさ。
大丈夫だよ。だって久しぶりのデートなんだし!」
青木「トラブルの方は解決したの?」
「あ、いえ、なかなか、大変で」
青木「それなのにデート。楽しそうね」
「プライベートも、大事、ですから」
青木「あなたみたいなラブカップルがいるから言われるのよ。
女性はいいですね。いざとなったら結婚すればいいんだしって。
いっそお辞めになったら?
恋人もそれを望んでいるんだろうし」
青木「…満点は神田さんと真鍋君。
最下位はまた西川くんと進藤さんね…」
「先生!私のネタ見てください!」
「あっ!オレのも!」
「私が先よ!」
「僕もです!」
青木「…」
(もぉーみんなぁ…)
青木「今日も最下位はいつもの二人みたいね。
皆が帰るまで反省していなさい。
もうワッショイは飽きたから、
今日から机の上で回転ライブドアオートでもやってなさい」
「先生!二人が可哀想です!止めて下さい!」
青木「神田さん、いくら成績トップのあなたでも私に逆らうのは許しません。
カードを持ってきなさい。
くだらない抗議ををして、皆の貴重な時間を無駄にしたから
マイナスポイントです。
ついでにペナルティとして、このタイコさんカードを頭に張っておきなさい」
「そんな…」
青木「早よせんかーい!!!」
「進藤さんからも言ってくれないかな?一緒に夏休み、楽しもうって」
「無駄だから辞めたら?みんな卒業証書貰って早く青木と縁切りたがってるんだから」
「進藤さんも?」
「別に。家にいたくないから。そっちこそそんなに悩むんなら、来なきゃいいじゃん」
「私たち、決めたんだ。どんなに青木に酷い目にあっても絶対諦めないって!」
「俺は、無理やり約束させられたんだけどねー!」
「進藤さんも私たちと一緒に頑張らない!?」
「何やってるの!?」
「馬場ちゃん!」
「何コソコソ話してたの!?わかってるわよ!どうせ私の悪口でしょ?」
「お前さ、被害妄想なんじゃねーの?」
「何か夏休みらしいことしようと話してただけだよ。そうだ!明日4人でどっか行かない?」
「私はパス!」
「進藤さん…」
「私だって!」
「馬場ちゃん…」
「はぁー…二人とも来ないじゃん…」
「しょうがないから二人でどこかに行く?何ならホテルとか!?」
「行くわよ!!」
「どうせまた冷たくされるだけだからやめたほうがいいじゃね〜の〜?」
「私、進藤さんって本当はそういう人じゃない気がするんだよね」
「ひかるのお友達が来るなんて久しぶり」
「そうなんですか…」
「あの子、学校ではどうなの?ちゃんとやってる?」
「進藤さんは…うん…勉強しなくてもすっごい勉強出来ますから」
「ところで担任の先生ってどんな方なの?あの子、学校のこと何も話してくれないから」
「え?じゃあ青木にイジメられたこととか知らないんですか?」
「え!?」
「あ!何でもないんです!テヘッェ!!!!!」
「テへ!」
「!進藤さん!」
「!?何か用!!?」
「あら失礼じゃない。せっかく遊びにいらしてくれたのに」
「ちょっと黙ってて!」
「何?話って。」
「なんていうか、進藤さんのこともっと知りたいなーと思って」
「写真だ…」
「かわいいね!友達?何年生の時?」
「いい加減にして!!これ以上干渉するのやめてくれる?」
「でもほら、私たち親友だし」
「やめてよ!!あなたは私の親友じゃないから。友達なんていらないから、私。出てってよ!」
「…はぁ…」
「ダメじゃん……ん…何か嫌な予感が…」
「!!!?青木!!?」
青木「相変わらずなかやまきんにくんのように無駄な努力しているみたいね。
みんなと仲良く夏休みを過ごしたいとか言って。
いい加減目覚めなさい。
向こうは迷惑なだけなんだから。
今の世の中、みんな自分さえ良ければいいの。
周りの人間のことなんかどうでもいいの。
上辺では仲良くしているけど、あなたみたいに何も知らないくせに
心の中に土足どころかスパイクで入ってくるような人間が
一番不愉快なの!
もう諦めなさい。あなたと友達になりたいなんて変わった人間は
彼といとうあさこぐらいしかいないんだから」
「皆に手紙を書いた!?」
「うん徹夜しちゃったから眠くって!」
「なんでそんなことすんだよ?」
「皆と仲良くなりたくって。テヘッ!」
「ふーん、懲りないねぇ…」
「あ!おはよう進藤さん!はい、これ」
「何これ?」
「とにかく読んでみて。出来れば返事くらい欲しいなー」
「…あなた本当に暇ね」
「おい!読んでやれよ!神田、徹夜して書いたんだぞ!」
「…」
「…あ、馬場ちゃん!これ読んでくれる?」
「何これ、何かの陰謀?進藤さんまで何もらっているんですか!?」
「何よ、真矢の言いなりの癖に威張っちゃって」
「!」
「ま、しょうがないわよね。ネタをやりたくないから青木のご機嫌とってないと…」
「!!」
「言っとくけど、あなたのことなんて誰も相手にしてないから」
「ううっ…」
「馬場ちゃん!」
「ちょっと言いすぎだ!」
「馬場ちゃん、ずっと進藤さんに憧れてたんだよ」
「言ったでしょ。友達なんかいらないって!」
「進藤さん!」
青木「まだ掃除してないの?早くしなさい」
「先生!進藤さんのこと教えて下さい!どうして友達がいらないなんて言うんですか?」
青木「…イメージ出来る?
昔は明るくて素直な子だったの、彼女。森山中の中島みたいな子だったの。
でも小学校3年生の時、両親が離婚して変わってしまった。
大好きな父親と離れて暮らさなければならなくなり、
しかも離婚の原因が、リストラされた父親を、母親が見捨てたせいだと
わかって、彼女に反感を持つようになってしまった。
でも、その頃出来た親友のおかげで、彼女は明るさを取り戻したの。
その親友と一緒にいれば、辛いことも忘れられるようになったから。
でも今度は、その親友に、母親が酷いことを言ってしまった。
あなたはうちの子にふさわしくないから、家に遊びに来ないでって。
しかも、信じられないことに、その翌日、その親友は交通事故で
亡くなってしまったの。
それ以来彼女は、完全に母親に心を閉ざしてしまった。
母親は親友を、殺したと思い込んだのね。
同級生とも距離を置いて、一人で本の世界に閉じこもるようになってしまった。
そして笑顔を忘れ、お笑いとは程遠い世界にずっと閉じこもっていたの。
彼女は怖いのよ。好きになった人が、みんな歌丸のように
いつか自分の前からいなくなってしまうんじゃないか。
要するに、友達を作る勇気の無い弱い人間なの」
『進藤さんのことが知りたいので、質問で〜す。食べ物は何が好きですか?
わたしは牛乳以外なんでもOK。将来の夢は何ですか?
わたしはないんだよね、まだ…面白い本があったら教えて下さ〜い。
むずかしくないのお願い。すぐ寝ちゃうんだわたしの場合。テヘッ!
好きな授業は何ですか?進藤さんは勉強?』
「…!」
「私は、いなくならないよ!」
「…」
「ずっと友達でいるからね。前に、進藤さんが、私をトイレに行かせるよう庇ってくれた時」
「…」
「すっごい嬉しかった。あの時、私が漏らしちゃったこともずっと黙っててくれたじゃん?」
「……」
「私、この人と同じクラスになれて良かったなって思ったんだからね」
「………」
「この人と絶対親友になるんだって、決めたんだから!」
「なにこの手紙、笑っちゃうよね」
「信じらんない!みんなに書いてるの」
「超ヒマだよね!」
「信じらんない!まだ私のこと島田さんの財布盗んだ泥棒とか書いてある!むかつく!」
「!おい!破んじゃねえよ!やめろ!」
「うっるさい!はなせ!」
「!?…皆!止めてよ!…あっ」
「いやーーーっ!!!!!」
「神田!!!」
「ガラスが…!」
「血が…ああ…」
青木「何をしているの?
…!
神田さん?」
「…はい…」
青木「動かないで」
「…お前らみんな最低だよ!弱虫だよ!卑怯だよ!!
…って、俺もこの前神田に言われたんだけどね。
こうも言われたよ。
俺達が同じクラスになったのは、運命じゃないのか。
何でみんなと仲良くしたらいけないんだって。
いい思い出作ろうとして何が悪いんだって。
このままクラスがバラバラになるのは、絶対にイヤだって。
お前らさ、あいつの言うこと正しいって思わないのかよ?
みんないい加減目覚めろよ!
俺達が青木の言いなりになったから、こんなことになったんだぞ!
クラスメートってさ、みんなで守るもんじゃないのかよ!!?」
『馬場ちゃんへ。もうすぐ誕生日だよね。今度誕生日会やろうね。
ハッピーバースデー』
「うううっ…ううっ…」
青木「もう帰ったら?みんなの顔なんて見たくないでしょ…」
「いえ、大丈夫です…」
青木「なら、教室に戻りなさい」
「…帰ってきた…」
青木「…神田さん、真鍋君。
何やってるの?ガラスが危ないじゃない。早く片付けなさい。
他の子たちは、予定を変更して外でチッチキチーの練習をします」
「先生!」
青木「なに?」
「私は、神田さんたちを手伝います。
私、ずっと友達作るの避けてました。
でも神田さんは言ってくれました。
私は友達だよって。
何があっても、ずっと友達だよって」
親友が困ってるの、ほっとけませんから」
青木「そんな愚かなことをして大丈夫?進藤さん。
神田さん達と友達になって何かいいことがあったかしら?
困った時、二人が助けてくれるかしら?
結局また裏切られて一人ぼっちになるだけよ。
そうなってから後悔しても遅いのよ。
X-GUNの丁半コロコロ改名くらい後悔するわよ!?
あなた達三人の味方になる人間は、このクラスにはもういないんだから」
「先生!」
青木「何ですか?」
「私…私も、神田さんたちの味方です!
私…私、初めてなんです。友達から手紙もらったの。
すっごく嬉しかった」
「俺も、一緒に掃除やります」
「僕も!」「俺も!」「私も!」
「ていうかさ、これからみんなで雑用やんない?」
「いいねー!」
「夏休みも、もう来ません!」
「俺も来ません!」
「卒業証書、いりません!」
「私もいりません!」
「私もいりません!」
青木「…みんなとじっくり話す必要があるみたいね。
ちょうどいいわ。一人ずつ個人面談をしましょう。
そうね、最初は…佐藤さん」
「え!?」
青木「困ったものね、みんな。友情なんていって、大事な授業を台無しにして」
「あ、そ、そうですよねー」
青木「佐藤さん。もし、またみんなが良からぬことを企んだら、私に教えてくれない?」
「もしかして、スパイになれってことですか!?」
青木「知ってるのよ。あなたが、島田さんの財布を盗んだ本当の犯人だってことぐらい」
「!?」
生徒達を掌で翻弄し続ける青木!!
そして新たなるスパイ(手駒)の誕生か!?
続く
2006年02月26日
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